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小野隆生コレクション展より第二回〜池上ちかこのエッセイ小野隆生 その2―犬の肖像 小野隆生の作品には、犬を描いたものがいくつかあります。この『黒く塗られた影』もそのうちのひとつです。耳をピンと立てた黒い犬。人物像に関してはモデルを持たない小野ですが、このエジプト犬は、はたして実在するのでしょうか。いつだったか画家の妻のお兄さんがエジプト犬を飼い始めたという話を聞いたことがあります。たとえそのことがきっかけであったとしても、人物と同様に犬をそのままを写すのではなく、画家自身の記憶の堆積と絡めながら描いていったものでしょう。 「肖像画」や「静物画」ほどポピュラーではありませんが、西洋絵画には「動物画」というジャンルがあります。18世紀イギリスの画家ジョージ・スタッブスは馬のポートレートで馬好きの貴族たちに大評判を得ました。そして19世紀に入ってからは犬などのペットの愛らしい表情をとらえた動物画が生まれました。しかし、このエジプト犬は、それらとはまったく違った雰囲気を宿しています。 さて、この真横を向く凛々しい姿。じーっと見ているうちに、ある絵が浮かんできました。ピエロ・デッラ・フランチェスカ『ウルビーノ公夫妻の肖像』(1474?75年頃)。夫妻が向き合うように描かれたあの有名な肖像画です。初期イタリア・ルネサンスの特徴とされるメダルの図像形式に基づく横顔の表現が、この犬の肖像にも反映されていることに気付かされます。 この絵は「動物画」ではなく、限りなく人物画に近い「(犬の)肖像画」なのです。 2009年5月15日 池上ちかこ 【TOP PAGE】 |