松本竣介が編集した『雜記帳』は、1936年自由な文章形式である随筆、エッセーを中心に、時代に文化の総合を求めた知性を提供する雑誌を目指し刊行されました。特集記事にヒューマニズムなどをテーマに掲げるなど、人間性に全幅の信頼と価値を置いた雑誌でもあり、その姿勢や態度は、編集者であった松本竣介の若々しく真摯な生き方そのものだったとも言えます。その『雜記帳』に作品を寄せた作家たちの作品を展示します。
展覧会に際し、カタログ(カラー、44ページ)を刊行します。テキストは小松崎拓男さん(美術評論家、文教大学非常勤講師)です。
出品作家:松本竣介、恩地孝四郎、福沢一郎、海老原喜之助、難波田龍起、鶴岡政男、桂ゆき
■松本竣介(1912年-1948年)
東京に生まれ、2歳のときに岩手に移り少年時代を盛岡で過ごす。1935年前衛グループNOVAの同人となり、二科展に初入選。翌年松本禎子と結婚し、二人で月刊の随筆雑誌『雜記帳』を創刊する(綜合工房刊、14号で廃刊)。戦時中は1943年靉光や麻生三郎、寺田政明ら同志8名で新人画会を結成し、第3回展まで開催した。戦後1946年美術家組合を提唱、戦争に疲れ沈退した全日本美術家の提携再起を促した。1947年自由美術家協会に新人画会のメンバーと共に参加し、翌1948年毎日新聞主催の連合展に「彫刻と女」「建物」を出品、これが絶筆となり、僅か36歳の短い生涯を終えた。